マキマって結構悲しい存在だと思うんですよね。
そもそも、こういうボスキャラって心の穴を見逃されがちですし、マキマ自身あからさまな”スキ”を見せるシーンって早々ないんですが、このテの人間ってわりかし現実に存在するので、それと対比していくと結構悲しさが色んなところににじみ出ていると思う。
まず、マキマはその存在がゆえに命狙われまくりです。
最初の死ぬシーンでは、新幹線で急に乗客に撃たれますよね。
おそらくこういった経験を死ぬほどしてきているので、まあ死んでも復活できるとしても、隣人を信用してはならんと言う精神は働くと思う。
そうなってくると、基本的に人類全般が信用できなくなるので、動物ぐらいにしか心を開くことが出来なくなってくる。
動物は疑う必要がないですからね。もちろん、動物に化けた悪魔もいるかもしれませんが、チェンソーマンではあまりそういったタイプは出てこなかったので、チェンソーマンに出てくる「犬」「猫」などの動物は基本的に癒しのキャラクターとしてしか出てきません。
まあそれはそれとして、そうやって動物にしか心を開いていないと、さらに心を閉じる羽目になるので、余計に自分の中の妄想や想像が肥大化していくんですよね。
その結果、チェンソーマンにあんだけべたぼれしてたし、そのくせ本物のチェンソーマンがさっぱり見抜けなかったんだと思います。
あそこがかなり、マキマとしての心の穴を感じたシーンでした。
マキマにとってのチェンソーマンって、マキマの心の中にしかいないんですよね。
マキマの中では目の前の「マジモンのチェンソーマン」なんざどうでもよくて、「自分の中の理想のチェンソーマン」が大好きなだけなんですよね。
結局、マジモンのチェンソーマンが見えなくなるくらい、自分の中の妄想が肥大化しているっていうことです。
それだけ、心を閉ざしっぱなしということなんですね。
しかし、それが”支配”の力の源泉でもあると思うんです。
だって、実際に「マジモンのチェンソーマン」がマジで好きなら、支配する必要がないんですよ。だって支配することで、マジモンのチェンソーマンじゃなくなるじゃないですか。自分の言うことを聞いてしまうので。
他者を人間が好きになるのは、それが他者だからです。
自分にないものを取り入れようとする行為です。
支配とは、それは自分をただ増やすだけの行為で、
そこは「他者を好きになる」と大きく違います。
例えば、好きなアイドルができたとして、「ああ、付き合えたらなあ」と妄想する分には起こり得るし、そういったことをしている人はいるでしょう。しかし、それを無理やりに現実化しようとするとそこに「支配」が発生します。
自分の頭の中で起こっている行為は、自分の頭の中でしか存在しません。
これだけ力を持っているマキマでさえ、チェンソーマンに食われたり何か望むことをすることは叶いませんでした。
しかし、その自分の頭の中で起こっていることを、それが絶対に現実であると信じて疑わないのは、心を閉ざしているからです。心の穴を必死に隠そうと閉ざしているので、そうやって頭の中の世界でしか生きられなくなる。
マキマは、他人と過ごしてないんですよ。
常に自分ひとり。
目の前にいても見ていないんですよ、人を。
それだけ自分の中身に閉じこもっていたら、そもそも他人を深く知る必要がないし、知ろうともしませんからね。
でも繰り返すようですが、それが支配力の根源なんです。
支配とは、自分の理想に他人を無理やり捻じ曲げる行為で、そうするには他人の意思や想いを完全に無視する必要があります。
完全なる主観で根拠も何もありませんが、支配する側の人間って、たぶん普通に心があるんですよ。全然冷徹じゃない。
冷徹なのではなく、「こいつ自分の思い通りになるやろなあ」「自分の命令こいつは聞いて当然だよなあ」というひどい思い込みと、それを現実にする力があるだけです。
それを冷徹というならそうですが。
支配力は基本的に”思い込み”力です。
思い込む力が一番大事なんです。
基本的に、ぶっちゃけこの支配の力自体(程度が低いと思う者を支配できる力)は、全人類誰にでも備わっていると僕は思っています。
ただ、だいたいの人間が他人と関わっている中で、そもそも”程度が低い”という存在があんましいないことに気付きます。別に自分より給料が低い人間でも、自分よりも優れたところを持っている人がいます。
支配のコツは、そこで「いや、給料が自分より低い奴は全員カスやろ」と思い込むことです。そうすると、相手が自分より優れたところを持っていようが、こちらは自信をもって威圧し、給料の低い奴を金で殴りまくることで、優れたところをガン無視して支配をすることができます。
クレーマージジイがやたら自信満々に威圧してくるのはそういうことです。
彼らは自信がないんですが、思い込み力が強いだけです、自分がこうすれば支配できるのだという思い込み力が。
で、話が戻ると、マキマは死ぬほど思い込み力が強いので「自分より程度が低い者」がどちゃくそいるってだけなんです。
だからこれは別にマキマだけの力ではありません。
みなさんもそこらの人間は全員カス!と思い込みましょう!!
カスに人権ないので殴ってもいいですよね!
なんでカスが自分に文句を言うんですか?おかしいですよね!
まあ、そういう感じで支配の力と言うものは発生します。
だから思い込み激しくない人は支配は出来ません、向いてません。
そもそも、支配と言うのは、たぶんやりたくてやってるんじゃないんですよね。
うわ、なんかこれ悪い事してる人の典型的言い訳臭いけど最後まで聞いて。
マキマみたいな存在は悲しい存在なので、支配でしかコミュニケーションが取れないんですよ。
先に述べたように、マキマは他人を信用していないので、そもそも他人に心を開いて、他人を他人として認めるコミュニケーション方法を知らないので、自分に閉じこもったコミュニケーションにしかならないんですよね。
で、結局そーなると、今目の前にいる実際の他人よりも自分の頭の中の他人を優先するので、コミュニケーションが成り立ちません。
成り立たせるには、目の前の他人を脳内と一致させるしかないです。
じゃ、目の前の他人を捻じ曲げましょうか。
はい、支配の完成です。
だからマキマ的にはコミュニケーションなんですよ、これ。コミュニケーション。
え?コミュニケーションじゃないって?おかしいなあ。
これはコミュニケーションなんだけどなあ。
そういう感じなんです。マキマの心の穴。
もうちょっと類似例を知りたいんだけど分かんないや。
自己愛性パーソナリティ障害とか近いかもしれんけどこれ正式な病名かイマイチわからんし。
何か類似例、ご存知の方いれば教えてください。
九州にいるとだいたいマキマ的人間たくさんいるよ。