言葉は水物、すぐに死ぬ

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「支配の悪魔」的人間は実在する~マキマの考察ブログ~

(※これはジャンプ12月14日発売号までのネタバレを含みます。

単行本読者はジャンププラスですぐに最新号まで買って読んでからお読みください。

大丈夫、僕も単行本派だったけど、買ったらわりとすぐハマったよ)

 

 

今週のジャンプが発売されました。

それを得て、

「お、やはりか…」

と思いました。

何がだよ。

いや、「やはりか…」

と思ったんですよ。支配の悪魔について。

 

前のブログで多少冷静でない記事を書いちゃいましたが、その理由としては

こういう「支配の悪魔」的な人間って結構いるんですよ、実際。そしてこれは、僕がイメージしたような「実際にいる支配の悪魔的人間」をあくまでもモチーフとして描いているな、と確信に変わりました。

作品を構造的に読むなら、基本的に支配の悪魔に関する考察の仕方としては、支配に関するモノを煮詰めた存在である必要があるため、例えばヒトラーだとか、スターリンだとか、そういう独裁者の文脈を使っていたり…という点が非常に色濃く出るかと思います。

しかし、作中のマキマさんは、どちらかというと一個人に対する支配力の側面が非常に色濃く出ていました。

例えば、アキをコントロールしていたり(おそらく能力を使って、自分のことを好きだと思いこませている)、デンジをコントロールしたり。

 

あるいは「これは命令です…」と能力を使ったり。

 

どちらにせよ、圧倒的な力を持っていましたが、その悪魔のアイデンティティを描く上で、そのほとんどが、先に挙げたような、独裁者的「組織的支配」あるいは「組織のリーダー的(演説力や指導力、先導力など)支配」ではなく、非常に「個人的な支配」が目立ったな、という印象でした。

 

 

その例をいくつか書いていき、その中で

「個人的な支配ってなあに?」

「それをする人ってどういう人間なの?」

「個人的な支配ってどう対処すればいいの?」

みたいなことを書きつつ、チェンソーマンに対する考察を深めていきます。

(※前回ブログで書いた話と一部被りますが、以前のブログはあまり冷静でなかったので、改めて頭冷やした状態で書きます)

 

 

◎支配①相手を誘惑することに長けている(※ただしこちらの手出しはない)

 

基本的にここでいう「マキマ的支配者」(以下「支配者」と略し、逆に独裁者的支配者は「独裁者的支配者」と記述します)は、「手出し」をしません。

悪く言えば、相手との対等な関係を結ぶことが難しいです。

まあ細かい話は後述するとして、「自分が手出しをせずに相手を魅了する」という意味での支配力に長けているのがマキマです。

まずは初めのほうの、このシーン。

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ここですが、まず「命令口調」で簡単な命令を聞かせることに成功しています(これはたぶん惚れさせたことによるものが大きいけども、そこからちょっとした命令を聞いてもらうことを繰り返すことで、命令がだんだん難しくなっても通りやすくなってきます)

そして、ここは一見普通の慰めシーンに見えますが、結局最後にある「チェンソーの悪魔と仲良くなりたいだけ(デンジはどうでもいい)」というところを考えてみると少し違った印象でしょう。

 

まず、デンジはまだファーストキスも初めてでした、この時点で。そのぐらいまだ経験が浅いです。

そうなると、「初めての経験」という、支配には絶好のタイミングがたくさんあるわけです。

人間、初めての経験がその後の経験の影響をかなり大きく受けることが多く、それが悪いものだったとしても、なかなか上書きできるものではありません。

(恋愛関係ないけど、僕は初めて給食で食べたスナックエンドウに虫が入ってて吐いたことで、大人になっても食べた瞬間にえずく。そういうようなやつ。)

 

だからここのチュッパチャップスのシーンには

1、姫野パイセンからのファーストキスの上書き

2、別の初めての経験を与える

この2つの意味合いがあります。

こうすることで、マキマさんの印象が色濃く残り、結果的に姫野パイセンに童貞奪われることなくとどめることができた。

(※たぶんセックス阻止自体はどっちにも転んでた、全然セックスしてたこともあっただろうけど、仮にセックスしていても、姫野パイセンとはセックスのイメージしか付かず、他方でマキマさんはきれいな初恋のイメージが残るので、結果的にマキマさんのところに戻るだろう。そこまでは考えてはいなかっただろうけど、初めての経験を抑えておくだけで便利に相手を支配できるということです。)

 

そういうやり口にところに長けているのが支配の悪魔、マキマさんです。

こういうやり口をやる「支配の悪魔的人間」はわりかしいるので注意が必要です。

(こういうやり口をやってくるわりに、見ているのは本人ではなく、その本人に付帯された称号だとか地位とか金とか、あと存在とかしかみていないような、そういう人間のことを支配の悪魔的人間だと思っている)

 

◎支配②感情を揺さぶることに長けている。

支配の手法はいくらでもあります。

「感情を揺さぶる」というのは最たる方法で、かつ簡単です。

これはどういうことかと言うと、「一つの感情にベクトルを向ける」ものではありません。例えば、「こいつを悲しい気持ちにさせたい~ウォ~!」と悲しい気持ちにさせるやり方…ではない!!ということです。それはむしろ、大衆を扇動するヒトラーとか向きでしょうか。

これは大衆に対してであれば成功率が高いですが、個人に対しては成功率が低いです。感情なんていくら支配しても読み切れないところがたくさん出てくるので。

だからどうするかというと「感情のジェットコースターを作り判断力を鈍らせる」ということをやるのです。

 

マキマさんが犬とめっちゃじゃれあっている話がありましたね。

あそこではデンジも読者も「こんなマキマさんなら…信用してもいいかも…?」と思いました。

その理由としては、そこまでマキマさんは徹底してスキをあまり見せない(映画のシーンくらいかな?ちょっとしたスキとしては)人間だったため、あそこまで開放的なマキマさんが描かれることがなかったからです。

なので、より人間らしい一側面を見せたことで、デンジも「あれ、なんかマキマさん変だなと思ってたけど、やっぱりいい人なんじゃん…?」と思ったことでしょう。

 

それこそが支配者の策略です。

 

ここでは、先に挙げたように「一つの感情に確実に持っていく」ことが目的ではありません。成功率が低いからです。ここで「やっぱりいい人じゃん!けど、でもまだ…」という「でもまだ…」が残ってしまっている可能性は否めません。

でも、ここで「でもまだ…」と思われていても、「感情のジェットコースター」を起こすには十分です。

まず、アキの件でデンジは混乱しています。

次に、犬の話の中で癒して落ち着かせます。

そうしてまた、落ち着いたところにパワーを殺します。

 

これで感情のジェットコースターは完成です。

そこに論理破綻した話を叩き込みます。

デンジが自分の父親を殺した話をしていましたね。マキマが。

あれは完全に論理破綻した話です。

デビルハンターとしてあれだけ人が死んでいるし、マキマも普通にコマとしていくらか人を使っているので、今更父親(しかも正当あるいは過剰防衛)を殺したぐらいでどうと言われる組織ではないですし、かつ、パワーの件もアキの件も、全部マキマが仕込んだことです。

しかし、アキが死んで、アイス吐くくらい動揺しているところに、マキマさんからの癒しがすごく入って、ほっとしたところに、またパワーの死というデカい動揺がやってくる。そんな状態で「お前が悪い」と言われたら、そう思わざるを得ません。

この「感情のジェットコースター」は、無理やりに情緒不安定な状態を作り出す手法です。

動揺しているところに罪悪感を起こさせてコントロールするのは支配的人間の常套手段です。

だから、こういう支配的人間は「過度に怒鳴る」だとか、極端な話を持ち出したり大事にする(自分はこういうことをされたから死ぬ、とか、死にたくなった、とか、お前のせいで仕事を辞めざるを得なくなった、とか)ことで、相手の感情を上下に揺さぶり、こちらの判断力を奪ったうえで、こちらに何かしらの判断を求めます。

 

これはパワハラなどでも使われている手法だと思います。

例えば、まず怒鳴る→動揺する→その状態で頭を使う判断を求めてくる

(お前なんでこんなことしたんだ!!(怒鳴る)→怒鳴りラッシュの後、冷静に「これはなぜ起こったか説明できるか?」→動揺しているため説明の整理ができない→「なんで答えられないんだ!」(怒鳴りラッシュ)→以降繰り返し)

そこで判断してしまうと負けです。徹底して避けましょう。

 

そして、ここのシーンはもう一つ重要なコマがあります。

 

◎支配③言葉の呪いのかけ方

 

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マキマの喋るおっぱいの謎-マキマの正体とは?|チェンソーマン考察|note

 

このシーンです。

 

何がポイントかと言うと、「お前は悪いヤツだ」ではなく「お前は悪いヤツだよね?」と言い、デンジからの「うん」を引き出していることです。

 

あくまでも最終合意を相手から引き出すことで、デンジは自分でこの考えに行きついたと勘違いしてしまいます。

あるいは、勘違いまでしなくても、呪いとしてずっと引きずることになります。

よく、相手から怒られたり嫌なことを言われたことがずっとリフレインする…なんて言われたりしますが、それならまだマシで、こういう「自分で発言したセリフ」はコントロールされていても客観視できず、全く違和感なく「自分でこう思った」と錯覚したまま、自分の思考の中に違和感なくするりと滑り込んだままになるのです。

ここに込められているのは、あくまでも「相手が自分で選択した」とすることで、少しだけこちらの支配の罪悪感を和らげ、責任転嫁する意味合いもあります。

 

細かいですが、支配的人間の手法と言うのは、こういった細かい部分に宿っており、このような方法で相手より上の立場をとる/取らざるを得ない人間はいるのです。

それでしかコミュニケーションの方法を知らない。

だから、逆に言えば悲しい存在であるともいえます。

こちらからの手出しを一切しない、こちらから相手に良く干渉することはせず、あくまでも「向こうが動いた」(こちらは何もしていない)とさも言わんばかりの状況を作り出す。

通常人間関係は対等にお互いがお互いの裁量で納得いく形で手出し(労力とか、気遣いとか、その他もろもろ、自分の何かしらのエネルギーを相手につぎ込むこと)がトントンにならないと、良い人間関係は生まれず、一方だけが手出しの関係性は少々出している側がキツイものがあります。

なので、こういう支配的人間は、まともな人間関係を築けず、かなり孤立しており、ゆえに余計に過激な発言や過剰な怒鳴りにシフトしてしまうというスパイラルに陥っているのかもしれません。

 

 

支配④能力自体の在り方「程度が低い”と思った”人間を支配できる」

 

これはかなりマキマを理解する上で大きなポイントでした。

チェンソーマン考察】「マキマ」と騎士「支配の悪魔」はすごく違う - ヒストールのブログ

 

ここで「自分より程度が低いと”思う”ものを支配できる」という”思う”が大きなポイントなのです。

これは事実、独裁者含め支配者に共通のポイントだと思います。

支配者や独裁者になるコツは、自分が最強で一番程度が高く、他の愚民どもは全員程度が低いと思っておくことです。

そうでもしないと、独裁なんてできやしない。大学教授とか研究者が「あなたのこの独裁行為はダメで~」と真面目に指摘が入ったときにいちいち「これは一理あるな…」と思っていたら独裁が一向に進まない。その指摘が、あっていようがまちがっていようが。

その「自分は最強」という強い思い込みがあるから、先の②の項目であげたような、論理破綻した話を、堂々と自信を持って話せるのです。

 

そういう意味では、支配的な人間というのは、基本、自分の世界に完全に閉じてしまっています。

自分の世界の思い込みの世界に生きており、なので「程度が実際に上の相手ですら、自分より程度が下だと思い込み支配する」ということが可能になってしまうのです。

 

◎支配的な人間の心理構造

だいだいこれで、支配的な、「支配の悪魔」的な人間がどういう人間かイメージできたでしょうか。

・こちらが手出し(損益や、労力)をせずに誘惑する手法を心得ている

(そのポイントも把握している)

・相手を感情のジェットコースターに載せてコントロールする

・自分が一番という思い込みが強く、自分の世界に閉じている

・相手のごくごく一部や表面的な部分しか見ていない

(ゆえに支配できる)

こんなところです。

 

上二つは能力的な部分ですが、「自分が一番と言う思い込みが強く、自分の世界に閉じている」というのは、支配的な人間の心理構造への理解を深める重要なファクターです。

 

自分が一番と思い込んでいる、あるいは「思い込まざるを得ない」という人も多いです。

例えば、田舎の典型的昭和男性とかだと、そういう傾向の人はまあまあ見かけるかもしれません。「田舎」「昭和」と括ると偏見臭いですが、例えば、能力もないのに威張るおじさん、職場にいませんか。おそらく、昔ながらの男性は「男は強くあれ」ということを異様に求められ、弱音を吐く雰囲気は一切ありません。

ただ、どんなおじさんであっても、だいたい能力がなければ「俺能力ねえなあ」と、さすがに30~40歳ぐらいで気づきます。

しかし、「強くあれ」という要請の中でなかなか「俺無能なんすよ…」と開き直って言うことはできず、結果的に威圧や威厳で、相手を動物のごとく威嚇することでしか、自分を強く見せる手法がないのです。そういう、能力がないところに気づいていない/あるいは見て見ぬふりをしている、つまり自分の世界に閉じこもっている人はまあまあいるとは思います。

 

では、なぜそういった支配的人間は駆逐されないのか。支配的人間を取り囲む存在がいるからです。

こういう人間には「素直な人間」か「察する人間」がハマりやすく、逆に「空気が読めない人間」「いつでも冷静に理詰めできる人間」は全くハマりません。

結局、先にも挙げたように、論理破綻してでも支配しようとするので、論理よりも威圧や威勢に負ける人、あるいは感情のジェットコースターに載せられることによる動揺が大きい人だと支配されやすいですが、そういったものに揺さぶられず、冷静に理詰めできれば対処できますし、逆に空気を読まず自己中心的に発言できる人は、こういう支配的人間の手には染まりません。なぜなら、「この人は怒っているから鎮めなきゃ…!」という空気感をガン無視して「いや怒鳴られんの不快なんだけど」を直球で投げられるからです。

そういう意味ではデンジ君はまだ幼かったので「素直な人間」に該当しますね。

 

また、「自分の世界に閉じている」に関してですが。

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この辺りですね。相手が本物のチェンソーマン(ポチタ)なのに、全然違う人間だと思っているし、そのポチタが望んでいないのに、勝手に私"達"と括っている。

完全に自分の世界での話しかしておらず、現実一切ガン無視で話が進んでいる。

 

だからマキマは孤独なんだと思います。

自分の世界を押し付ける人には、奴隷しかやってきません。

マキマには、まともな人間がよりついてきていないのです。

結局、こうやって自分の世界に入って抜け出せないのも、相手の表面上や浅いところだけ捉えて、それしか見えてないし、その表面上のところにすごい自分補正をかけてみているから、なんにも気づかないんだと思います。

だって、おかしくない?

嫌いなデンジのことがわからないならまだしも、

これだけ「ファン」「私たちの邪魔をしないで」とかまで言っているのに、

チェンソーマン(ポチタ)に全く気付かないって。

結局、嫌いな人間、どうでもいい人間のみならず、好きな人間ですら、表面上の存在でしか捉えていない。

だから支配できるのです、チェンソーマンを。無慈悲に。

 

 

◎デンジは支配の悪魔が育たない方法を知っている

支配の悪魔が育たない方法は簡単です。

片方が支配文脈に乗らないことです。

結局、支配的な文脈でお話をされる方に、支配されるがままになったところで、それは支配を加速させるだけになります。

だからこそ、支配的な人間には、それが全く聞かない人間と接するのが、一番お互いにいい方法であり、支配的な人間も、支配をするクセを脱する機会にもなります。

 

だから、一方的に相手を愛し、表面的なもの(すがたかたちや、相手の威圧や威嚇といった、表向きのつよい感情)を撤廃し、本質を見ようとするというのは、

支配者にとってかなり重要だと思います。

 

デンジの愛は相当なものです。

何故なら、マキマさんを「愛をこめて」解体したのですから。

よくマキマさんが調理され食べられるシーンが引用されますが、

それ以上に「マキマさんってどうやって解体したの?」問題が発生するはずです。

この問題の解決方法は、「本気で取り込むつもりでマキマさんを愛を持って解体する」ことです。

狂ってませんか?

解体する間、一度も「攻撃」としてデンジが認識してないってことでしょ???

ヤバすぎでしょ。

 

狂いながら愛していたからこそ成り立った行動です。

こういう愛がある行動は、支配者を支配から脱却させます。

それはなんでかというと、支配者が見せているのはあくまでも表面的な自分であり、それ以外の部分というのは、ある意味支配者自身も目をそらし隠している部分なので、本質をスパッと見抜き、支配に関係なく動く相手に心揺さぶられます。


また、先に挙げたように、支配者は支配ゆえに孤独です。

「マキマはママ」という作者の発言があったそうですが、僕は逆にも解釈しています。

たぶん作品が終わる直前まではマキマはママでした。しかし、この大きなデンジの愛によって、最終話ではむしろデンジがママとなり、子供になった支配の悪魔を優しく包み込むかたちで終わったからです。


自炊を覚え、パワーに優しくしたりする中で、デンジは「おっぱい揉ませろ~」という状態から、愛を与える存在に変わったのです。


だから、ポチタがいっていた「支配の悪魔は孤独で、支配することでしか関係が築けなくて…」という話はすべて今まで話してきた話のまとめです。

僕は今までかいたことずっと考えていたのですが、ポチタのせりふでそれが答えだとわかったのでブログに書きました。

 

 

さて、だいたい支配の悪魔的存在がどのような存在かわかったでしょうか

こういう人間は現状いまはただ牙をむいてないだけで、いったんそのモードになるとがっつり支配してくる人もたくさんいます。

なので、支配に飲まれないように。

支配に乗っからないように。

 

どうかお気をつけて。