人生は夢だらけ。
まあそんなことはねえ。
単語だけ切り取ればそういう話にしかならない。
だけど僕はそんな話をしていない。
椎名林檎の「人生は夢だらけ」の話をしている。
「人生は、夢でいっぱいなんだよ!」
ギイギイ、ガタガタ、錆びついたロボットみてぇなガラガラ声で自動音声が繰り返す。
ガッチャガチャうるせえ歯車鳴らしながら、さっさと廃棄になればいいものを、懲りずに「人生!夢!夢!」と叫び続ける。
そんなわけがあるか。
人生に夢などない。
人生はくそくらえ。
僕の人生がクソ。
だから人生はクソ。
人生の価値を今まで値踏みされ続け、サビだらけのロボットが「君は社会に向いてないねえ」だとか「公務員なったら?」だとか、なんだとかあーだとか、近所のおばさんの説教。
やれ学歴だ、やれ年収だ、やれ何か成し遂げた、だ。
何かは分からない何者かを常に目指すことを強要され、強要されてないはずなのに自らその鎖の中に飛び込んでは絡めとられ死んでいく日々。
そんな与えられた人生に夢もくそもあるか。
クソクソクソクソクソ。
何者にもなれない、ただただ、定時上りができる事だけしかできる自慢がないクソのサラリーマン。
それですら、人生の価値になりえてしまうなんて、どれだけ人生ってクソなんだ。
こんな価値がいるか。
だから人生はクソだらけ。夢などない。
だから僕はこの人生をぶっ殺したい。
誰かから与えられたクソみてえな人生、何しようがしまいにゃいっしょくたなクソみてえな人生はぶっ殺したい。
人生は夢いっぱい!なんてクソワードと一緒に豚箱にぶち込んで餌にしてやる。
それはてめえらの夢だ、俺の夢じゃない。
結婚式を挙げて孫を?
それはお前の夢じゃねえのか。
サラリーマンで出世して部長に?
それもお前の夢じゃねえのか。
社会人としてまっとうな態度を?
それもお前の夢じゃねえのか。
あれもこれもどれもこれも、それもこれも、どいつもこいつも。
みーんな、お前の夢じゃねえのかよ。
なんでお前はお前の人生生きねえんだよ。
お前の夢はお前で達成しろよ。
なんで俺の人生使うんだよ。
お前の夢だ。すべて。
俺の夢じゃない。
この、この、この人生、いまここに生きている、ここの人生。俺の人生。に、何にも関係がない。
俺が味わいたいのは、”この”人生。
人生、私の人生。誰のものでもない私の人生。
その中でひたすらにもがいて、ゴミとののしられ、価値のないと打ち捨てられ、それでもクソと言い続けながら、はいつくばって生きて感じられる実感。
酸いも甘いも。
それが人生。私の人生。たらふく味わいたい。
誰のものでもない。
人生、つまみ食いするな、人生。
私のひとりじめ。私の人生。
わたしは自由。
だから、人生は夢だらけ。
そうして、初めて、人生は夢だらけ。
だから二度と、「人生は夢だらけ」なんてクセエ言葉を口にするな。