言葉は水物、すぐに死ぬ

月間10万PVありがとう。Twitterの話題を中心に「ちょっとこれ、どうなんだ」というネタに切り込んでいきます。 言葉が死ぬ前に、残しましょう。

「アドバルーン」(マキタユウスケ作)を読んで

特に目的はなく文フリ東京にきた。

なんか面白い出会いがあるかな、と。

わかりきった出会いほどつまらんものはないので、よくこういうことをする。

 

というわけで、予期せぬ良き出会い、がたくさんあったわけだが、その一つが「アドバルーン」だった。

 

正直ある程度見終わったな~というところにふと目についたビラ。
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この表紙がビラとしておいてあって、ふらっといって気に入ったので買ったら残り一冊だった。

 

表紙買いだったけど、買って正解だった。
同人誌になると、結構挿し絵と文章がちぐはぐなものがある(商業誌でもたまにあるが)。
ちぐはぐといっても、世界観のレベルで、だ。
確かにその絵はその作品のことを描いてはいるが、全然イメージしてる世界観とは違うでしょ、感覚と違うでしょ、っていう意味だ。作品で書いてないことを描きすぎて「そこまでいうてへんやろ」となっちゃうこととか、よくある。
ただこの作品は見事に挿し絵と文章でひとつの作品になっている。このふわっとした絵のなかにしっかりと中身が凝縮されている。表紙買いしてよかった。

さて作品についてだが、どれも絶妙なバランスで、現実感と非現実感のあいだをいったりきたりしている。
とくにこの「ちょっと不思議」感がとてつもなくたまらない。最初に収録されている「エスカレーターガール」、エレベーターガールならぬエスカレーターガールの話なのだが、そもそもこのテーマのチョイス自体が絶妙。主人公が体験したことを語る形で、相手がエスカレーターガールを知らないテイで説明をしだすんだけれども、もちろん知らないのでするする入ってしまう。けどもイメージはできる。

そうやって話を聞いていくと、なんだか童話を聞かされているようで、しかして話は童話なんかよりももっと具体的で、現実的で、自分の中の思い出や記憶と合致させてしまいそうになって、だけどもちょっと不思議で。これがもうちょっと話が古かったり抽象的だとたちまち「童話」になっちゃうけれども、あくまでも「ちょっと不思議」でおさまっているのだ。

一番好きなのは「眠り猫」だ。
猫を主軸とした話なのだが、前半とても細かく主人公と猫とのふれあいが描いてあるから、するする読んですっかり自分のなかで具体的なイメージや感情が出てきて、入り込んできたところに、「ちょっと不思議」要素を混ぜてくる。
猫の集合的無意識、あるいは集合的意識。

(詳しく書きたいけれども一応読んでない人メインに見てもらうつもりなので詳しくは読んでね)

そういうワードが出てくる。
ここでこの集合的意識に関して、作中でいらん解説をしすぎるとたちまち「SF」ないしは「ファンタジー」になるが、そこをぐぐっと押さえてあって、ここでもやはり「ちょっと不思議」でおさまっているのだ。
SF好きなせいで「猫の集合的無意識とは? これがもし本当に存在するとしたらどういう状況? 何が考えられる?」なんて考えてしまうが、それはハッキリいって野暮というものだ。


ポストカードも買ってよかった。
やはり挿し絵にする場面も、とてもチョイスがよい。
まりなさんの絵が、世界観に入り込めるようにするっと手助けしてくれる。

 

挿し絵と文章、何があってるかって「抽象度合い」だと思うんですよね。文章がもっともっと具体的に細かに書いてあったら、絵もそれに合わせて具体的でないとなかなか文章から映像をイメージしずらい。ただこの文章は「すこし不思議」感を出すために敢えて書いてない部分がある。その度合いと、挿し絵の度合い。挿し絵で描いてない部分と、文章で書いてない部分。その、なんというか、"度合い"が、ちょうどよいのだ。

その感じがとても心地よくて、いい組み合わせだなぁとしみじみ思った。

 

全体的に「すこし不思議」な話ばかりなので、前半二つ三つ読んだらあとはもうするする入っていって、「もっと書いて~~~」となっていく。トライアングルの話とかは個人的にもうちょっと今後の展開見たかったな~と思ったりした。

 

自分は先日群馬にいったんですよね。東京はその通り道で、ホントは旅程に文フリ東京はさっぱりなかったんですが、羽田空港近いし、どうせ通り道だし、そして時間めっちゃ余ったし、いってみるかぁと。

そのなかでこういう本を、ラスト一冊を手に入れて。それも含めてちょこっと不思議なお話でした。

 

以下で売ってたりするので、良ければぜひぜひ。

https://adballoon-turistas.tumblr.com

 

 

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